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SNS運用代行の費用|相場を調べても決められない理由と、見積書を比べられる形に直す手順

Film倶楽部 編集部 2026.10.06

SNS運用代行の費用を解説した記事には、たいてい相場が書いてあります。

ところが、記事ごとに書いてある幅が違います。下限の置き方も、上限の置き方も、記事によってばらばらです。上限に至っては、記事の間で数倍の開きがあります。

そして、どの記事の相場も、自社が受け取った見積もりが高いのか安いのかを教えてくれません。

この記事では、金額を1つも書きません。代わりに、なぜ相場が決まらないのかと、見積書を比べられる形に直す手順を書きます。読み終えたら、手元の見積書が自社にとって高いかどうかを、自分で判断できるようになります。

なぜ相場が、記事ごとに違うのか

公的な統計が、2019年になくなっています

まず、事実を1つ。

経済産業省の特定サービス産業実態調査は、広告業を含むサービス業の売上や単価を継続して調べていた統計でした。この調査は2019年に他の統計へ統合され、単独の調査としては行われなくなっています。

その結果、SNS運用代行の料金について、国が調べて公表している数字は存在しません。

「相場が分かりにくい」のは、調べ方が足りないからではありません。調べる先が無いのです。

残っているのは、各社の自己申告です

では、記事に並ぶ相場は、どこから来ているのか。

その記事を書いた会社が、自社で受けている案件から出した平均か、その会社が知っている範囲の集計です。確かめる方法はありません。

これは、その会社が不誠実だという話ではありません。ほかに出しようがないというだけです。

「相場」は、その会社が受けている仕事の平均です

もう一段、踏み込みます。

ある会社が「月◯万円が相場です」と書いているとき、それはその会社が受けている案件の平均に近い数字になります。東京の代行会社が、東京の企業から受けている案件の平均です。

福井の中小企業が、月に2回の撮影を含む形で頼もうとしているときに、その平均が当てはまる理由はありません。業種も、地域も、頼む範囲も違うからです。

だから、相場と比べても何も分からない

ここまでをまとめます。

相場を使ってできること相場を使ってできないこと
だいたいの桁を知る自社の見積もりが妥当かを判断する
予算の話を始める入口にする2社の見積もりを比べる
社内で説明するときの前置きにする何にお金を払っているかを知る

右の列が、発注する側がいちばん知りたいことです。そして相場では答えが出ません。

この記事は、右の列を扱います。

金額は「何を、どれだけやるか」で決まります

SNS運用代行の見積書は、作業の積み上げでできています。中身が分かれば、金額の理由も分かります。

運用代行に含まれる6つの工程

工程何をする作業か費用を動かすもの
企画・構成何を発信するか決める。台本を書く月に何本の企画を出すか
撮影現地に行って撮る来る回数。移動の距離
編集素材を投稿できる形にする本数と、修正の回数
投稿アップロードする。本文とハッシュタグを付ける本数
コメント対応返信する。荒れたときに対処する対応する時間帯と範囲
分析・報告数字を見て次に反映する頻度と、報告書の中身

この6つのうち、自社に要るものと要らないものがあります。そこを決めないまま見積もりを取ると、要らないものが入った金額と、要るものが抜けた金額を並べて比べることになります。

いちばん金額を動かすのは「撮影の回数」

6つのうち、金額への効き方が突出しているのが撮影です。

撮影には、人が現地へ行く時間がかかります。片道1時間の現場に月2回行けば、それだけで移動に4時間。福井県内でも、嶺北と嶺南では移動の負担がまったく違います。

撮影が含まれない見積書と、月2回の撮影が含まれる見積書は、金額だけ比べても意味がありません。安いほうを選んだ結果、素材は全部自社で用意することになった、という話がよく起きます。

次に効くのは「修正の回数」

編集の費用は、本数だけでは決まりません。何回直せるかで変わります。

修正の回数に上限が書かれていない見積書は、一見すると親切に見えます。ただ、上限が無いということは、受ける側がその分を金額に織り込んでいるか、実際には断られるかのどちらかです。

「修正は2回まで、3回目からは1回につき◯円」と書いてある見積書のほうが、あとでもめません。

「一式」と書かれた見積書は、比べられません

「SNS運用代行一式 月額◯◯円」

この書き方の困るところは、金額ではありません。あとで「それは範囲外です」と言われたときに、確かめる先がないことです。

撮影に来てもらえると思っていた。月の途中の差し替えに応じてもらえると思っていた。こうしたずれは、たいていここから起きます。

工程が分かれた見積書を出してもらってください。断られることは、まずありません。

契約の型で、払っているものの意味が変わります

金額の内訳と同じくらい、何に対して払う約束なのかが効いてきます。ここは民法の条文で整理できます。

報酬の型は、2つあります

SNSの運用を外に頼む契約は、民法でいう準委任契約に当たることが多くあります。そして準委任の報酬には、条文の上で2つの型があります。

型条文報酬が発生する条件
履行割合型民法第648条第3項仕事をした割合に応じて報酬が発生する
成果完成型民法第648条の2成果を引き渡したことに対して報酬が発生する

噛み砕くと、履行割合型は「やってくれた分だけ払う」、成果完成型は「できたものに対して払う」です。

月額固定は、履行割合型に近い形です

月額◯万円という契約の多くは、履行割合型に近い形になります。

この型では、成果が出なくても、決められた作業が行われていれば報酬は発生します。受ける側の誠実さとは関係なく、契約の型がそう決まっているためです。

だから、「その月額で何が行われるのか」を決めていないと、高いか安いかの判断そのものができません。前の章の6工程が、そのまま判断材料になります。

成果報酬は、成果の定義がすべてです

成果報酬型の提案が出ることがあります。成果が出なければ払わなくてよい、と聞こえるので魅力的に見えます。

決めておくのは1つだけです。何をもって成果とするか。

成果の置き方発注する側から見たときの意味
再生回数数字を作る動機が受ける側に生まれる
フォロワー数同じ。増やし方を先に確認しておく必要がある
問い合わせ件数自社のフォームで数える。重複や営業電話の扱いを決めておく
来店・予約・申込数えられるなら、いちばんずれが少ない

成果の定義を、契約書に一文で書けるかどうか。書けないなら、その成果報酬は成り立ちません。

初期費用は、何に対する費用か

月額とは別に初期費用が乗ることがあります。これ自体は普通のことです。確認するのは、何の作業に対する費用かです。

よくある中身確認すること
アカウントの設計・初期設定設定したものは自社に残るか
方針や運用ルールの作成書面で渡してもらえるか
最初の素材の撮りだめ何本分か。使わなかった素材はもらえるか

「初期費用」とだけ書かれていたら、内訳を聞いてください。ここに何が入っているかで、契約を終えたときに手元に残るものが変わります。

見積書を比べられる形に直す、3つの質問

複数社から見積もりを取ったら、次の3つを全社に同じ言葉で聞いてください。それだけで、比べられる形になります。

質問1「この金額に、撮影は何回含まれますか」

含まれる回数、1回あたりの時間、交通費が別かどうか。この3つまで聞きます。

「素材はご用意ください」という形なら、自社が撮影に出す時間が費用に加わります。金額には出てきませんが、確実にかかるものです。

質問2「修正は何回まで含まれますか」

上限の回数と、超えたときの費用。

あわせて、「修正」の定義も聞いておくと確実です。テロップの文言直しと、構成の作り直しでは、作業量がまったく違います。

質問3「この金額に、広告費は含まれますか」

ここが混ざっていると、金額を比べられません。

費目誰に払うか性格
運用代行の費用代行会社作業に対する報酬
広告費プラットフォーム配信のために使う。使った分だけ出ていく
広告の運用手数料代行会社広告の設定と調整に対する報酬。広告費の何%という形が多い

広告を出さない方針なら、この行は最初から要りません。「広告も含めて月◯万円」という提案を受けたときは、広告部分を外すといくらになるかを聞くと、運用そのものの値段が見えます。

3社を並べる枠

聞いた答えを、この形に落とすと比べられます。

確認項目A社B社C社
月額
初期費用
撮影の回数
交通費
修正の回数
投稿の本数
広告費の扱い
報告の頻度と中身
最低契約期間

この表が埋まらない会社は、比較の土俵に乗りません。金額の高い安いより先に、ここで差が出ます。

見積書に出てこない費用

金額の話で見落とされやすいものを並べます。

交通費・出張費

月額に含まれるのか、実費が別なのか。撮影の回数を増やすたびに増える費用なので、地方では効きます。

遠方の会社に頼む場合、含まれていないと、回数を増やした月に金額が跳ねます。

素材の権利処理

動画を作る場合、次の3つに費用が発生することがあります。

対象何が起きるか
音源商用に使える音源を使うか、別途許可を取るか。許可を取るなら、その作業と費用が誰持ちか
写真・イラスト素材サイトの利用料。商用利用の可否
出演者社員以外に出てもらう場合の謝礼。使用の期間と範囲

権利処理を含む見積書と、含まない見積書は、比べても意味がありません。

自社が出す時間

これがいちばん見えにくい費用です。

自社の作業月にどのくらいか
撮影の立ち会い1回あたり半日〜
素材や情報の提供企画のたびに発生
内容の確認・承認本数に比例
問い合わせが来たときの対応増えるほど発生

「安いほうを選んだら、社内の負担が増えた」というのは、この列を数えていなかったときに起きます。

最低契約期間と中途解約

契約書の側に書かれる項目ですが、総額を決めるのはここです。

月額が同じでも、最低契約期間が6か月と12か月では、払う総額が倍違います。中途解約の条件(違約金があるか、残りの月額を全額払うことになるか)まで見てください。

作ったものは、誰のものか

費用の話から少し離れて見えますが、同じ金額を払っても、手元に残るものが違うので、ここは比較の材料になります。

「著作権を譲渡します」だけでは、全部は移りません

契約書に「本件成果物の著作権は甲に譲渡する」と書かれていることがあります。ここで、条文にこういう定めがあります。

> 著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。

(著作権法第61条第2項)

第27条は翻案などの権利、第28条は二次的著作物の利用に関する権利です。つまり、「作り変える権利」は、契約書にはっきり書いていなければ、作った側に残っていると推定されます。

何ができなくなるのか

やりたいこと第27条・第28条が書かれていない場合
60秒の動画を15秒に切り直して広告に使う作り変えにあたるため、確認が必要になりうる
縦型の動画を横型にして会社案内に入れる同じ
過去の投稿から抜き出して採用説明会で流す同じ
写真をチラシやホームページに転用する同じ

運用を頼んだ会社と良い関係が続いている間は、実務では問題になりません。問題が出るのは、契約が終わったあとや、別の会社に切り替えたあとです。

契約書の著作権の条項に、第27条と第28条を含む旨と、著作者人格権を行使しない旨が書かれているか。署名の前にこの2行を見てください。

同じ金額でも、残るものが違う

ここが費用の比較に効いてきます。

比べるところA社B社
月額同じ同じ
著作権の範囲第27条・第28条を含む書かれていない
素材の引き渡し撮影データとプロジェクトファイルを含む完成品のみ
契約終了後過去の素材から別の用途に作り直せる作り直すには相手の確認が要る

同じ金額なら、左のほうが安いということです。金額だけを並べると、この差は見えません。

引き渡してもらうものを、契約書に書く

契約が終わるときに受け取るものを、先に決めておきます。

「使わなかったカット」が意外に効きます。撮影では多めに撮り、使うのは一部です。残りが手元にあれば、同じ撮影から別のものを作れます。

やめるときにかかるもの

事業者どうしの契約に、クーリング・オフはありません

これは、知らないまま署名してしまう方が多い点です。

特定商取引法にはクーリング・オフの制度がありますが、適用除外の規定があります。

> 営業のために若しくは営業として締結するもの

(特定商取引法第26条第1項第1号)

消費者庁も、事業者間取引については全面適用除外であると説明しています。

会社として、自社のSNS運用のために契約を結んだ場合、クーリング・オフは使えません。「無料のSNS診断」といった名目で営業を受け、その場で契約書に署名してしまうと、あとから無条件で解約することは、まず通りません。

対策は「その場で署名しない」の1点です

契約書は持ち帰る。それだけです。

持ち帰って読むと言って渋られるなら、その反応が判断材料になります。急いで決めなければならない事情は、発注する側にはありません。

期間限定の割引を理由に、その場での署名を求められることがあります。そのときは、「持ち帰って読んだうえで、同じ条件で申し込めますか」と聞いてください。これに答えられない割引は、値引きの形をとった、考える時間を削るための道具です。

契約書で見る4か所

見る場所確かめること
最低契約期間何か月か。途中で解約できるか
中途解約の条件違約金があるか。残りの月額を全額払うことになるか
更新の方法自動更新か。更新しない場合はいつまでに伝えるか
解約の申し出の方法書面か、メールでよいか。何か月前に伝えるか

3つ目と4つ目が組み合わさると、抜けにくくなります。「自動更新・解約は3か月前までに書面で」という条件だと、更新月の3か月前に気づいていないと、もう1年続きます。

個人やフリーランスに頼む場合

費用を抑える選択肢として、よく検討されます。

金額は下がることが多くなります

会社に頼むより費用を抑えられることがあり、話が早いこともあります。ここまでの6工程と3つの質問は、個人に頼む場合もそのまま使えます。

増える確認事項

確認すること理由
体調を崩したとき、繁忙期のとき代わりがいない。投稿が止まる期間が出る
契約を終えるときの引き継ぎデータがその人の個人のパソコンにある
稼働できる時間本業がある場合、撮影に来られる曜日と時間が限られる
連絡が取れなくなったときの窓口会社なら別の担当者がいる

どれも頼まない理由ではありません。先に決めておけば済む話です。

発注する側が、守る側になることがあります

個人に業務を委託する場合、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が関わってきます。

この法律は、委託を受ける側を守るための法律です。つまり、発注する会社のほうが義務を負う側になります。取引の条件を明示する義務があり、1か月以上の委託についてはいくつかの禁止行為が定められています。

自社の取引が対象になるかは、委託の相手や内容によって決まります。ここで断定はしません。個人に継続的に委託する予定があるなら、公正取引委員会や中小企業庁が公開している資料で、自社が対象になるかを確かめてから進めてください。

知らずに違反する側に回らないための確認です。

自社でやる場合の「費用」

「外に出すと高いから社内で」という判断をする前に、社内でやる場合の費用も同じ物差しで見ておきます。

人件費のほかにかかるもの

社内でやる場合にかかるものを並べます。

かかるもの中身
担当者の時間企画・撮影・編集・投稿・返信・分析。6工程が全部社内に来る
覚えるまでの時間編集の操作、各SNSの仕様。最初の数か月は効率が出ない
機材・ソフトスマートフォンで始められるが、続けると編集ソフトの費用が出る
素材の権利処理音源や写真の扱いを、自社で判断することになる

いちばん大きいのは1行目です。そして、この時間は通常業務から引かれます。

人を雇う場合は、採用できるかから始まります

福井で人を1人増やすことが、どのくらいの話なのかは数字で見ておく価値があります。

福井労働局が公表している「雇用失業情勢」によると、令和8年7月の有効求人倍率(就業地別・季節調整値)は1.69倍でした。全国は1.18倍です。同じ資料に、この水準が100か月連続で全国で最も高いという記載があります。

求人倍率が高いということは、働く人の側が選べる状態だということです。求人を出せば来る、という前提は置けません。動画が作れて、SNSの感覚があり、撮影にも出られる人となると、さらに限られます。

採用できるかどうかと、辞めたときにどうするか。この2つが、社内でやる選択肢に付いてくる問題です。

続かないと、費用はゼロにならない

社内でやる形のいちばんの難しさは、続けるところに出ます。

最初の1か月は本数が出て、2か月目に減り、3か月目に止まる。担当者が通常業務を抱えたままだと、忙しい週にまず削られるのがSNSだからです。

止まったとき、それまでにかけた時間は戻りません。外注費がかからなかった代わりに、社内の時間が消えています。

続けられるかどうかは、時間が確保されているかで決まります。週に何時間を、誰の業務として空けるか。それが決まっていないなら、外に頼むほうが結果として続きます。

社内でやる費用のうち、外から減らせるもの

上の表のうち、外から減らせる行が2つあります。2行目の「覚えるまでの時間」と、4行目の「素材の権利処理」です。

1行目の担当者の時間は、社内でしか用意できません。ただ、担当者が操作や仕様を一人で調べながら進めると、その時間の多くが調べものに消えます。音源を使ってよいか、この表示で足りるか、といった判断を一人で抱えると、投稿の手が止まります。

ここを外に持つやり方があります。投稿を作る作業は社内に残し、学ぶ場所と聞く相手だけを外に置く形です。

社内でやるときに止まる場所外に置けるもの
編集の操作や企画の立て方を、一から覚える順を追って学べる教材
各SNSの仕様や規約が変わったことに、気づくのが遅れる最近の変化を定期的に確かめる場
音源や広告表示の扱いで迷い、投稿が止まる迷ったときにすぐ聞ける相手

この形では、払う費用の意味が変わります。代行に払う費用は、投稿という作業の対価で、やめれば投稿も止まります。学ぶ場所に払う費用は、担当者の技術として社内に残ります。アカウントも、撮り方の型も、自社の手元にあります。担当者が替わるときに引き継ぎの手間が出る点は、社内でやる形と同じです。

Film倶楽部では、この形を「Buzz倶楽部」という名前で提供しています。動画教材を見放題で使えて、月に1回のオンライン勉強会で最近の変化を確かめ、日々の疑問はグループチャットで質問できます。「外に頼むほどの予算は組めないが、社内だけでは続かない」という段階の会社に向けたものです。

なお、外に頼むか社内でやるかを費用と会社に残るもので比べた記事を、別に公開しています。判断の手前で迷っている段階なら、そちらから読んでいただくほうが早いかもしれません。

予算の組み立て方

相場から決められないなら、どこから決めるか。順番を書きます。

1. 何のためにやるかを決める

目的が違えば、必要な工程も本数も変わります。

目的主に要る工程本数の考え方
採用撮影(人・現場)・編集少なくてよい。中身が濃いほうが効く
集客・来店企画・撮影・投稿の頻度多いほうが効く。続けられる数で
認知・知ってもらう企画・編集出す頻度が効く
既存のお客様との関係投稿・コメント対応頻度より、返信の速さ

採用が目的なら、月に何十本も要りません。目的を決めないまま本数の見積もりを取ると、必要以上の金額になります。

2. 自社が出せるものを数える

外に頼む場合も、素材のもとは自社にあります。

分類数えるもの
現場撮影できる場所がいくつあるか
人出演してもよい人が何人いるか
商品・サービス説明したいことがいくつあるか
よくある質問お客様から実際に聞かれることの数

4つ目がいちばん枯れにくいものです。質問を20個書き出せば、それだけで2か月分の題材になります。

3. 自社が出せる時間を決める

撮影の立ち会いに、月に何時間出せるか。誰が出るか。どの曜日・時間帯なら空くか。

これが決まると、見積書の撮影回数が自社に合うかどうかを判断できます。月2回の撮影が含まれる提案が来ても、月に2回立ち会えないなら、その提案は自社には合いません。安くても高くても、噛み合わない提案は使えません。

4. ここまでを決めてから、見積もりを取る

1〜3が決まっていれば、見積書の内訳を見た時点で、その金額が自社にとって高いかどうかを判断できます。相場は要りません。

逆に、決めないまま相場を調べて安いところを選ぶと、続かない形になりやすくなります。

予算が限られるときに、削る順番

全部は頼めない、という場合の考え方です。

削りやすい順何を削るか何が起きるか
1投稿の本数減らしても続けば効く。増やすのは後からできる
2撮影の回数まとめ撮りに変える。1日で数本分を撮る
3編集の凝り方簡素な編集でも、中身が良ければ見られる
4広告費出さない選択もできる
—企画と分析ここを削ると、続けても良くなりません

最後の行が要点です。何を出すかを決める工程と、出したあとに見直す工程。この2つを削ると、作業だけが残ります。

支払いの条件も、比べる材料です

金額が同じでも、払い方が違えば負担感は変わります。

前払いか、後払いか

形発注する側から見ると
月末締めの翌月払い作業が終わってから払う。ふつうの取引に近い
当月の前払い先に払う。受ける側は着手しやすい
半年・1年の一括前払い割引が付くことがある。途中でやめたときの扱いを先に決めておく

3つ目を選ぶときは、中途解約したらどうなるかを必ず確認してください。返金があるのか、残りの期間は使い切る形なのか。ここが書かれていない一括払いは、避けたほうが無難です。

月額の起算日

月の途中から始める場合、初月をどう数えるかで金額が変わります。

日割りにするのか、当月分を満額とするのか、翌月から数えるのか。契約書に書かれていないことが多い箇所なので、始める前に一言確認しておくと、初回の請求書で驚かずに済みます。

業務が止まった月の扱い

こちらの都合で撮影ができなかった月、先方の都合で作業が進まなかった月。それぞれどうなるかを決めておきます。

繁忙期に撮影に出られない月が読めているなら、最初からその月を外した契約にするほうが、あとで相談するより簡単です。

打ち合わせの段階で見えるもの

契約の前に、金額以外で判断できることがあります。

報告書の見本を見せてもらう

地味ですが、いちばん効きます。

報告書に再生回数とフォロワーの増減しか載っていないなら、その会社が何を見て運用しているかが、それで分かります。逆に、どこで離脱しているか、どの企画が伸びてどれが伸びなかったか、次に何を変えるかが書かれているなら、数字の後ろを見ています。

見本は、契約前に頼めば出てきます。出てこないときは、その事実が答えになります。

過去に作ったものを見せてもらう

実績を聞いたら、実際の投稿を見せてもらってください。「社数」や「再生回数」だけでは、仕上がりが分かりません。

自社と近い業種のものがあれば、なお分かります。無くても、画づくりと文章の質は見れば判断できます。ここが自社の雰囲気と合わないなら、金額が合っていても続きません。

担当者が変わる可能性を聞く

打ち合わせに来た人が、そのまま担当するとは限りません。

聞くことなぜ
実際に運用するのは誰か提案した人と作る人が違うことがある
担当が変わるときの引き継ぎ方針や過去の経緯が引き継がれるか
連絡の窓口は1人か複数だと、決めたことが伝わらないことがある

断られる仕事があるかを聞く

意外に判断材料になる質問です。

「どういう案件はお断りされますか」と聞いて、答えが返ってくる会社は、自社の得意な範囲を分かっています。「何でもやります」という答えは、聞こえは良いのですが、得意な形が無いということでもあります。

業種によって、費用の重心が変わります

同じ「SNS運用代行」でも、どの工程にお金がかかるかは業種で変わります。

業種重心がかかる工程理由
飲食撮影料理や仕込みの場面が主役。現場に来てもらう必要がある
建設・工事撮影・企画現場が毎回変わる。安全面の配慮も要る
小売編集・投稿の頻度商品の入れ替えに合わせて本数が要る
士業・コンサル企画見せる現場が少ない。何を話すかで決まる
製造撮影工程を撮るのに時間がかかる。段取りが要る
採用が目的撮影・企画人に出てもらう。撮影の日程調整に手間がかかる

自社がどの行に近いかで、見積書のどこを厚くすべきかが決まります。全部の工程を平均的に頼む必要はありません。

高いか安いかを、自社で判断する

金額の絶対値では判断できません。自社の商売に当てはめて考えます。

1件の価値から逆算する

かける費用が見合うかどうかは、1件の取引で得られるものと、何件必要かで決まります。

たとえば、1件の受注で得られる粗利が分かっているなら、月にかける費用を、その粗利で割ってみてください。出てきた数字が、その月に必要な件数です。

その件数が、自社の感覚で「ありえる」なら、金額は見合っています。「それは無理だ」と感じるなら、金額が高いか、目的の置き方が違います。

この計算ができるのは、発注する側だけです。粗利を知っているのは自社だからです。見積もりをもらったら、その場で電卓を叩いてみてください。

採用が目的なら、別の物差しになります

採用のために使う場合、比べる先は採用にかかっている費用です。

求人媒体への掲載費、人材紹介の手数料、説明会の運営費。いま採用1人あたりにいくらかかっているかが分かっていれば、SNSにかける費用が見合うかを判断できます。

期間で見る

SNSは、出したその月に結果が出るものではありません。半年から1年の単位で見る前提で予算を組んでください。

3か月で判断してやめると、かけた費用がそのまま消えます。続けられる金額に抑えるほうが、大きな金額で短く終えるより結果が出ます。

始めたあとに、金額を見直す

契約したら終わりではありません。続けるうちに、要る工程と要らない工程が見えてきます。

3か月たったら、内訳を見直す

最初に決めた構成が、そのまま最適とは限りません。

見直す観点起きていること
撮影の回数が多すぎる素材が余っている。まとめ撮りで足りる
撮影の回数が足りない同じ画が続いている。本数を減らして回数を増やす
本数が多すぎる社内の確認が追いつかない。質が落ちている
分析が形だけ報告は来るが、次の企画に反映されていない

見直しの相談は、契約期間の途中でもできます。「減らしたい」と言い出しにくいと感じるかもしれませんが、受ける側にとっても、続かない契約より回る契約のほうが良いはずです。

増やすなら、効いている題材から

数字を見て、よく見られている題材が分かってきたら、そこに寄せます。

金額を増やすのは、効く形が見つかってからで構いません。最初から大きく始めて、効く形が見つかる前に予算が尽きるのがいちばんもったいない形です。

契約の更新前に確認すること

更新の時期が来たら、次を見てください。

2つ目と3つ目が0なら、問題は使い方にあります。更新のときに、そこを相談してください。

広告であることを示す責任は、発注した会社にあります

費用とは別に、押さえておく点です。

2023年10月1日から、景品表示法の告示によって、いわゆるステルスマーケティングが規制の対象になりました。消費者庁は、規制の対象についてこう書いています。

> 規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する事業者(広告主)です。……インフルエンサー等の第三者は規制の対象とはなりません。

責任を負うのは、発注した会社のほうです。代行会社が投稿しても、インフルエンサーが投稿しても、規制の対象は変わりません。

代行会社に任せる場合、広告であることの表示を誰が入れるかを先に決めておいてください。「表示は不要です」と言われた場合でも、責任が移るわけではありません。

よくある質問

結局、いくらくらいかかりますか

この記事では書きません。公的な統計が存在せず、民間の数字は調べる先で変わるためです。

代わりに、工程の内訳を出してもらい、「撮影の回数」と「修正の回数」を確認してください。この2つが、必要な金額をいちばん大きく動かします。そのうえで、前の章の「1件の価値から逆算する」を自社の数字で計算すれば、高いかどうかは判断できます。

安い会社に頼んでも大丈夫ですか

金額の低さ自体は問題ではありません。何が含まれていないかを確かめてください。

撮影が含まれていない、修正が1回まで、投稿だけで企画は自社、といった形なら、安いのには理由があります。その形が自社に合っているなら、良い選択です。

相見積もりは取るべきですか

取って構いません。ただし、自社が出せる素材と時間を決めてから取ってください。決める前に取ると、比べる基準がないまま金額だけを見ることになります。

「月◯本」という本数だけで比べると、いちばん本数の多い提案が良く見えます。ところが本数を増やすほど、自社から出す素材と時間も増えます。

最低契約期間が長い会社は避けるべきですか

一概には言えません。運用は積み上げで効いてくるので、受ける側が一定の期間を求めるのには理由があります。

見るのは期間の長さより、中途解約の条件です。途中でやめられるのか、やめた場合に何を払うのか。ここが明示されていれば、期間が長くても判断できます。

契約書の雛形は、どちらが出すものですか

相手が出してくることが多くなります。それで構いません。出てきたものを、この記事の「契約の型」「作ったものは誰のものか」「やめるときにかかるもの」の観点で読んでください。

自社に不利な条項があったときは、直してもらう相談ができます。直せない理由を説明できる会社なら、その説明も判断材料になります。

まとめ:相場の代わりに使うもの

この記事で言いたかったことは、2つです。

1つめ。相場が決まらないのには理由があります。公的な統計が2019年になくなり、残っているのは各社の自己申告です。確かめられない数字を基準にすると、判断そのものが確かめられなくなります。

2つめ。相場が無くても、判断はできます。次の順番で進めてください。

手順やること
1何のためにやるかを決める
2自社が出せる素材と時間を数える
3工程が分かれた見積書を出してもらう
4「撮影の回数」「修正の回数」「広告費の扱い」を全社に同じ言葉で聞く
5契約書で、著作権の範囲・最低契約期間・中途解約の条件を見る
61件の粗利で割って、必要な件数が現実的かを自分で計算する

6つとも、相場を知らなくてもできます。そして6つ終えたときには、手元の見積もりが自社にとって高いかどうかが分かっています。

聞いてみて、頼まないという結論でも構いません

3つの質問に答えられなかった。工程の内訳を出してもらえなかった。契約書に解約の条件が書かれていなかった。

そういう会社に頼まずに済んだのなら、話を聞いた時間は無駄になっていません。この記事で挙げた質問は、どれも一言で答えられるものばかりです。答えに詰まるようなら、その一点だけでも持ち帰って考える理由になります。

SNSの運用でお困りでしたら

Film倶楽部は、福井でSNSの内製化支援「Buzz倶楽部」と、SNSマーケティング、ショートドラマの制作を手がけています。

社内で回せるようにする形も、運用をお任せいただく形も、どちらもご相談いただけます。「社内で回したいが、何から覚えればよいか分からない」という段階なら、Buzz倶楽部の中身からご案内します。「外に頼むべきか、社内でやるべきか」の段階からでも構いません。

他社からお受け取りになった見積書について、「この内訳をどう見ればよいか」というご相談でも結構です。

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次の一歩を、一緒に。

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