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インスタ運用代行に頼んでよいこと、頼むと規約違反になること|発注する前に決めておく5つ

Film倶楽部 編集部 2026.10.03

Instagramの運用代行を紹介する記事の多くは、「おすすめ60選」「比較15選」のように会社を並べる形をしています。読めば、会社の名前と料金の幅は分かります。

ただ、その先で迷います。

アカウントのIDとパスワードを渡していいのか。渡したあと、辞めてもらうときにどうやって取り上げるのか。フォロワーを増やしてくれるという話は本当なのか。頼んだ結果、アカウントが止まることはないのか。

この記事は、その手前を扱います。Instagramの規約と公式ヘルプに書いてあることだけを並べて、「頼んでよい運用」と「頼むと規約に触れる運用」の線を引きます。そのうえで、発注する前に決めておくことを5つにまとめました。

料金の相場は出しません。理由は後半で説明します。

「代行に頼むこと」自体は、規約で禁じられていない

最初にはっきりさせておきます。

Instagramの利用規約には、「第三者がアカウントを運用してはいけない」と書かれた条文はありません。会社のアカウントを、社外の人が投稿を作って運用すること自体は、規約が禁じている行為ではありません。

禁じられているのは、もっと具体的な4つです。

利用規約の4.2に、次のように並んでいます。

禁じられていることどういう場面で起きるか
アカウントの売買・譲渡「フォロワーのついたアカウントを買いませんか」という誘い
他のユーザーのログイン情報を求める、集める、使うこと代行会社にIDとパスワードを渡す運用
明示の許可のない自動的なアクセス自動でいいねを押す、自動でフォローするツール
本人の明示の許可なく、他人のアカウントを作ること社員名義のアカウントを会社が勝手に作る

この中で、発注する会社がいちばん引っかかりやすいのが2つ目です。

IDとパスワードを渡す運用は、ここに触れうる

多くの代行会社が、契約したあとに「アカウントのIDとパスワードをお教えください」と言ってきます。会社側も、それが普通だと思って渡します。

ただ、規約の文言はログイン情報を「求める」ことと「使う」ことを並べて禁じています。依頼した側と、依頼された側の、どちらの行為も文言の中に入っています。

ここで、法的にどうなるかを断定することはしません。規約の解釈は運営会社が行うもので、この記事が判断できることではないからです。

ただ、事実として言えることが2つあります。

ひとつ。アカウントが止まったとき、困るのは発注した会社のほうです。代行会社は別のお客様の仕事を続けられますが、止まったアカウントは自社のものです。フォロワーも、これまでの投稿も、そこに紐づいています。

もうひとつ。公式には、パスワードを渡さずに外部へ運用を任せる方法が用意されています。

わざわざ用意されている以上、「パスワードを渡すしかない」という前提そのものを疑ってよい、ということになります。

パスワードを渡さずに任せる方法がある

Instagramのビジネス向けアカウントは、Metaのビジネスツールから権限を渡せます。

Meta Business Suite に、代行会社を「パートナー」として追加する形です。自社のビジネスポートフォリオに相手の会社を紐づけて、必要な範囲の権限だけを渡します。パスワードを教える必要はありません。

そして、ここが大事なところです。

契約が終わったら、「ビジネスポートフォリオから削除」で権限を一括して取り消せます。相手に「パスワードを変えてください」とお願いする必要も、変えたあとに相手がまだ入れるのではないかと心配する必要もありません。

ほかのプラットフォームにも、同じ仕組みがあります。

プラットフォーム渡し方取り消し方
Instagram・FacebookMeta Business Suite にパートナーとして追加ビジネスポートフォリオから削除すると、一括で取り消される
YouTubeYouTube Studio の「設定 → 権限」から招待。役割は管理者・編集者・編集者(制限付き)・閲覧者削除すると、その時点でアクセスが切れる
TikTokビジネスセンターの「ユーザー」から招待「削除」を選び、認証コードを入れて外す

発注する前に、この形で任せられるかを聞いてください。

「パスワードでないと運用できません」と言われたら、その理由を聞いてみてください。技術的にできないわけではないので、答えられるはずです。答えが曖昧なら、その会社が公式の仕組みを使い慣れていない、ということは分かります。

権限を渡す前に、自社側でやっておくこと

外部に権限を渡す準備は、渡す当日ではなく、その前に済ませておくほうが楽です。

まず、アカウントの持ち主が自社になっているかを確かめてください。

よくあるのが、前の担当者の個人のアカウントで作られていて、その人が辞めたあと誰も入れなくなっている、という状態です。この状態のまま外部に渡そうとしても、そもそも権限を配る側の権限がありません。

次に、管理者を社内に2人以上置いてください。

管理者が1人だと、その人が長期で休んだときにアカウントが動かせなくなります。外部に任せていても、任せる側に管理者がいなくなれば、権限を取り消すこともできません。

最後に、渡す権限の範囲を決めてください。

投稿を作る人に、支払い情報まで見せる必要はありません。役割を分けられる仕組みが用意されているのは、分けて使うためです。

「フォロワーを増やします」の中身を分けて聞く

フォロワーを増やす、という言い方には、まったく性質の違う作業が混ざっています。

投稿の質を上げて、見た人が自分からフォローする。これは普通の運用です。

一方で、規約が明確に禁じているやり方もあります。

自動でいいねを押したりフォローしたりする道具の利用は、「明示の許可のない自動的なアクセス」に当たります。規約4.2に書かれているとおりです。

TikTokも、販売者向けの公式ページで同じ趣旨を示しています。作られた交流を、自然に増えたものであるかのように見せることを禁じる、という内容です。互いにいいねを押し合う集まりに参加することや、内容と合わない煽り文句で釣ることも、あわせて挙げられています。

プラットフォームが違っても、考え方は共通しています。人が見て反応したのかどうかを見ている、ということです。

発注する前に、こう聞いてください。

「フォロワーを増やす方法を、具体的に教えてください」

答えが「投稿の質と頻度」「ハッシュタグの設計」「広告」であれば、普通の運用です。答えが濁ったり、「独自のノウハウなので」と言われたりしたら、そこは踏み込んで聞いてよい場所です。

数字が増えても、増え方が規約に触れていれば、止まるのはあなたの会社のアカウントです。

数字の見方を、最初に揃えておく

もうひとつ、聞いておくとよいことがあります。

「増えたフォロワーが、お客様になりうる人かどうかを、どうやって確かめますか」

フォロワーの数だけを目標にすると、増やすこと自体が目的になります。福井の工務店のアカウントに、海外のアカウントが何千とついても、仕事にはつながりません。

代行会社が出すレポートに、フォロワーの数だけでなく、どこの誰が見ているのか(地域、年代)と、投稿から自社サイトへ何人動いたのかが入るかどうかを、最初に確かめてください。

数字の種類を先に揃えておくと、3か月後に「増えたのか増えていないのか」で揉めずに済みます。

広告や依頼を受けた投稿には、公式の表示機能を使う

自社のアカウントで発信するだけでなく、ほかの人に紹介してもらう形を取ることがあります。

このとき、守るべきものが2つあります。プラットフォームの規約と、国のルールです。

プラットフォームの側

Instagramの利用規約4.2には、ブランドコンテンツを投稿するときは、ブランドコンテンツポリシーに従う必要があると書かれています。そしてそのポリシーは、ブランドコンテンツツールの使用を求めています。

つまり、「広告であることを示す機能を使うかどうかは任意」ではありません。規約の側から求められています。

ほかのプラットフォームにも、それぞれの仕組みがあります。

プラットフォーム仕組み
Instagram・Facebookブランドコンテンツツール(タイアップ投稿ラベル)
TikTok商用コンテンツの公開設定
YouTube有料プロモーションの開示。動画の冒頭に表示される

国のルールの側

2023年10月1日から、ステルスマーケティングが景品表示法の規制の対象になりました。

ここで、発注する会社にとって大事な一文があります。消費者庁の説明です。

規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する事業者、つまり広告主です。インフルエンサーなどの第三者は、規制の対象とはなりません。

読み違えないでください。責任を負うのは、依頼した側です。

「代行会社に任せていたので知りませんでした」は通りません。依頼して発信してもらった内容が、広告だと分からない形で出ていた場合、問われるのは発注した会社のほうです。

なお、この規制に課徴金はありません。ただし措置命令の対象にはなり、命令を受けると事業者名が公表されます。罰金の額よりも、名前が出ることのほうが、地域で商売をしている会社にはこたえます。

社員が書く投稿も、対象になりうる

もうひとつ、見落とされやすい点があります。

消費者庁の考え方では、事業者が自分で表示しているとみなされるかどうかは、その表示に事業者が関与しているかで判断されます。社外の人に頼んだ場合だけの話ではありません。

従業員が自社の商品について投稿する場合も、会社の指示や関与があれば、会社の表示として扱われる余地があります。

代行会社に頼むかどうかとは別に、社内向けにも「会社の商品について書くときは、社名を出す」といった線を決めておくほうが安全です。

発注の前に、表示をどうするかを決めて、契約書か発注書に書いてください。口頭の「よしなに」で進めると、あとで確かめる手立てがなくなります。

料金の相場を、この記事では出しません

ここまで読んで、金額の話がないことに気づかれたと思います。理由を説明します。

SNS運用代行の料金について、公的な統計が存在しないからです。

近いものとして、経済産業省が行っていた特定サービス産業実態調査がありましたが、2019年に他の調査へ統合されました。業界団体がまとめた相場の資料も、この分野では見当たりません。

では、比較記事に載っている「月10万円から30万円」といった数字は何かというと、記事を書いた会社が自社の感覚で示したものか、掲載している会社に聞いた自己申告です。実際、記事によって幅が違います。同じ「相場」という言葉で、月2万円からと書いてある記事も、月50万円までと書いてある記事もあります。

幅が3倍も4倍も違うものを「相場」と呼ぶことはできません。

ですから、この記事では金額を書きません。代わりに、金額よりも先に決めるべきことを書きます。

何に対して払う約束なのかを決める

料金の話でいちばん揉めるのは、金額の大小ではありません。何ができたら払うのかが決まっていないことです。

外部に仕事を頼む契約は、民法では準委任という形になります。この準委任には、報酬の決め方が2つあります。

型根拠報酬が発生する条件発注する側から見ると
履行割合型民法第648条第3項仕事をした割合に応じて成果が出なくても、動いた分は払う
成果完成型民法第648条の2成果を引き渡したことに対して成果が出なければ払わない。ただし成果の定義が要る

多くの運用代行は、前者です。月に何本投稿して、レポートを出して、その働きに対して月額を払う形になります。

これは悪いことではありません。アカウントが育つかどうかは商品や会社によって変わるので、成果を約束できる仕事ではないからです。

問題は、発注する側が後者だと思い込んでいるときに起きます。「お金を払ったのにフォロワーが増えなかった」という不満の多くは、ここから生まれます。契約は履行割合型なのに、成果完成型のつもりでいた、というズレです。

見積書を見るときは、金額の前にこれを確かめてください。

「この月額は、何をしたら発生しますか」

答えが「投稿10本とレポート1回です」なら履行割合型です。「フォロワーが◯人増えたら」なら成果完成型です。どちらでも構いません。どちらかをはっきりさせておくことが大事です。

見積書は、費目に分けて読む

月額いくら、という一行だけの見積書が出てくることがあります。この形だと、何が入っていて何が入っていないのかが分かりません。

分けて聞いてください。SNSの運用には、性質の違う作業が混ざっています。

費目中身確かめること
企画・設計誰に向けて何を発信するかを決める最初だけか、毎月見直すのか
素材づくり写真、動画、図の制作撮影に来るのか、こちらが送った素材を使うのか
投稿作業文章を書いて、投稿する月に何本か。予約投稿だけか
交流コメントやメッセージへの返答含まれるか。返答の時間帯は
分析・報告数字を見て、次の打ち手を出す月に何回か。どんな数字を出すか
広告費実際に広告に使うお金運用の費用とは別。誰が払うか

最後の1行に注意してください。

広告費は、代行の費用とは別のお金です。ここが分かれていない見積書だと、「月額20万円」の中に広告費が含まれるのかどうかで、実際に使える金額が変わります。

あわせて、含まれていない作業を聞いてください。

「この金額に入っていないもので、よくご請求が発生するのは何ですか」

この聞き方だと、相手も答えやすくなります。撮影で遠方に行く場合の交通費、急ぎの差し込み、キャンペーンの企画。あらかじめ分かっていれば、予算の立て方が変わります。

相見積もりは、条件を揃えてから取る

複数の会社に見積もりを頼むとき、「インスタの運用をお願いしたい」とだけ伝えると、返ってくる金額はばらばらになります。含まれる作業が会社ごとに違うからです。

条件を先に書いて、同じ紙を渡してください。

書くのは次の項目です。

この6行があれば、返ってきた金額を並べて比べられます。

逆に、この6行を決めずに「おまかせで見積もりを」と頼むと、安い会社は安いなりの範囲で、高い会社は広い範囲で出してきます。金額の差が、値段の差なのか範囲の差なのかが分かりません。

作った素材を、あとで別の場所に使えるか

もうひとつ、あとから困るのが素材の権利です。

代行会社に作ってもらった写真や動画や文章を、契約が終わったあとに自社のホームページやチラシで使いたくなることがあります。

このとき、契約書に「著作権は甲に譲渡する」とだけ書いてあると、足りない場合があります。

著作権法第61条第2項に、こういう定めがあります。著作権を譲るという契約で、第27条(翻案などの権利)と第28条(二次的著作物を利用する権利)を譲る対象として特に書いていないときは、それらの権利は譲った側に残ったものと推定されます。

翻案というのは、作り変えることです。動画を短く編集し直す、写真に文字を入れる、といった行為が含まれます。

つまり、「著作権は譲渡」とだけ書いた契約だと、もらった素材をそのまま使うことはできても、作り変えて使うことができない、という読み方が残ります。

あわせて、著作者人格権についても確認してください。この権利は譲渡できないので、実務では「行使しない」という特約を置きます。これがないと、あとで手を加えたときに、作った人から異議が出る余地が残ります。

発注前に確認する文言は、次の2つです。

第27条と第28条を含めて譲渡すること。

著作者人格権を行使しないこと。

長い契約書を読み込む必要はありません。この2つが書いてあるかどうかだけ見れば足ります。

音楽が入る場合は、窓口が2つになる

動画を作ってもらう場合、音楽の扱いも確かめておいてください。

文化庁が出している契約の手引きでは、音楽には著作権と原盤権という2つの権利があり、窓口が分かれていることが説明されています。曲そのものの権利と、録音されたものの権利は別です。

「フリー素材なので大丈夫です」と言われたときは、何に対して無料なのかを聞いてください。個人の利用は無料でも、会社の宣伝に使う場合は別の手続きが要る、ということがあります。

発信する中身は、自社でしか決められない

ここまで、頼み方の話をしてきました。ひとつだけ、外に頼めないものがあります。

何を言うかです。

代行会社は、投稿を作る技術を持っています。ただ、あなたの会社の商品がなぜ選ばれてきたのか、お客様がどこで迷って、何を決め手に頼んだのかは知りません。それを知っているのは社内の人だけです。

ここが空白のまま始まると、当たりさわりのない投稿が並びます。同業の誰が出しても成り立つ内容になり、読んだ人の記憶に残りません。

依頼する前に、次の3つを自社で言葉にしておいてください。

誰に向けて発信するのか。

「幅広い方に」ではなく、思い当たる具体的なお客様を1人思い浮かべてください。その人が何に困って問い合わせてきたかを書き出せば、それが素材になります。

何が決め手で選ばれてきたのか。

価格なのか、対応の速さなのか、作業の丁寧さなのか。過去に「ここが良かった」と言われた言葉を思い出してください。その言葉が、いちばん強い材料になります。

何を言わないと決めるのか。

触れられたくない話、まだ公開していない取り組み、社内でも意見が割れている点。言わないことを先に決めておくと、外部の人が迷わずに済みます。

この3つをまとめた紙を1枚渡すだけで、最初の1か月の手戻りが減ります。作り込む必要はありません。箇条書きで構いません。

撮影が入る場合は、社内の段取りも決めておく

写真や動画を撮ってもらう場合、社内で決めておくことがあります。

誰が写るか。社員が写る場合は、本人に断ってください。あとから「消してほしい」と言われる可能性があります。

いつ撮るか。通常の業務を止めて撮影する時間は、働いている時間です。就業時間内に行うのか、残業として扱うのかを決めておいてください。

どこを撮らないか。他社の名前が入った書類、個人情報が写る画面、まだ発表していない商品。撮影前に、映ってはいけない場所を伝えておくと、あとで撮り直しにならずに済みます。

契約は、あとから無条件では解約できない

最後に、知っておいていただきたいことがあります。

会社と会社の取引には、クーリング・オフがありません。

特定商取引法第26条第1項第1号で、営業のために、または営業として結ぶ契約は、同法の規定の適用から除かれています。消費者庁も同じ説明をしています。

個人が訪問販売で契約した場合には、一定期間内なら無条件で解約できます。しかし、会社として運用代行の契約に署名した場合、「やっぱりやめます」で無条件に戻すことはできません。

だからこそ、署名の前に確かめることが大事になります。

この4つは、口頭ではなく書面で確かめてください。

なお、委託の相手が個人事業主の場合は、フリーランス法の対象になることがあります。この法律は、委託する側に取引条件を書面などで明示する義務を課しています。一定の期間以上の継続的な委託では、禁止される行為も定められています。ただし、どの取引が対象になるかは相手の形態や委託の期間によって変わるので、自社の取引が当てはまるかどうかは個別に確かめてください。

発注する側にも守るべきことがある、という点だけ頭に置いておいてください。公正取引委員会がまとめている運用の状況を見ると、取引条件を明示していなかった、という指摘が相当数あります。頼む側が気をつける話でもあります。

提案書を受け取ったときに見る場所

見積書と一緒に、提案書が出てくることがあります。きれいな資料ですが、見る場所は決まっています。

まず、自社の話が書いてあるかを見てください。

業界の一般論と、他社の成功事例ばかりで、あなたの会社の商品名やお客様の話が出てこない提案書があります。それは、あなたの会社に向けて作られたものではありません。同じ資料が、別の会社にも渡っている可能性があります。

次に、根拠が書いてあるかを見てください。

「SNSの利用者は増えています」「動画の時代です」といった前置きに、出典が付いているか。付いていない場合、その数字がどこから来たのかは分かりません。

最後に、できないことが書いてあるかを見てください。

これがいちばん大事です。すべてうまくいく前提の提案書は、実務を知らないか、隠しているかのどちらかです。

たとえば、次のようなことは、正直な会社なら書きます。

「できないこと」を先に言う会社のほうが、あとで揉めません。

数字の約束が書かれていたら、条件を確かめる

提案書に「3か月でフォロワー1,000人」といった数字が書かれていることがあります。

このとき、確かめることが2つあります。

ひとつ。その数字が達成できなかったとき、どうなるのか。返金があるのか、期間を延長するのか、何もないのか。何もないなら、それは約束ではなく目標です。目標として受け取る分には構いませんが、契約の中身とは別だと理解しておいてください。

もうひとつ。どうやって達成するのか。先に書いたとおり、規約が禁じている手段で数字を作ることができてしまう領域です。手段を聞いて、答えが具体的でなければ、そこは掘ってください。

発注する前に決めておく5つ

ここまでの内容を、確認する順にまとめます。

#決めること確かめ方
1アカウントの権限をどう渡すかパスワードではなく、公式のパートナー機能で渡せるか聞く
2フォロワーの増やし方「具体的にどうやって増やしますか」と聞く。自動化の道具を使わないことを確かめる
3広告表示の扱い依頼した発信に、公式の表示機能を使うことを書面で決める
4何に対して払うのか「この月額は何をしたら発生しますか」と聞く。履行割合型か成果完成型かを確かめる
5素材の権利と、やめるときの条件第27条・第28条を含む譲渡と、著作者人格権の不行使。最低契約期間、違約金、権限の返し方

この5つが決まっていれば、金額が高いか安いかは、そのあとで判断できます。逆に、これが決まっていない状態でいくら比較しても、比べているものが揃っていません。

契約書で見る場所を、10か所に絞る

契約書は長いものです。全部を読み込む必要はありません。見る場所は10か所で足ります。

#見る場所書かれていないと起きること
1委託する業務の範囲「これは契約に入っていません」と言われる
2月の作業量(投稿の本数、報告の回数)どこまでやれば済むのかが決まらない
3報酬が発生する条件成果が出ないのに払うのか、で揉める
4広告費の扱い(誰が払うか、報酬に含むか)予算が想定の倍になる
5契約期間と、最低契約期間やめたいときにやめられない
6中途解約の条件と違約金同上
7成果物の著作権(第27条・第28条を含む譲渡)素材を作り変えて使えない
8著作者人格権の不行使手を加えたときに異議が出る
9アカウントの権限の付与と返還の方法終わったあとも相手が入れる
10秘密保持の範囲社内の情報の扱いが決まらない

この10か所に印を付けながら読めば、30分で確認できます。

書かれていない項目があったら、「ここはどうなりますか」と聞いてください。聞かれて嫌がる相手かどうかも、判断の材料になります。

報告書は、3種類の数字で読む

契約が始まると、月に一度、報告書が届きます。この読み方も決めておいてください。

数字には、性質の違う3種類があります。

1つ目は、こちらが出した量です。投稿の本数、動画の本数。これは、決めた作業が行われたかを見る数字です。契約どおりかを確かめる場所であって、成果ではありません。

2つ目は、見られ方です。表示された回数、保存された数、フォロワーの増減。ここは、投稿の中身が合っているかを見る場所です。保存の数は、あとで見返したいと思われたということなので、フォロワー数より中身の手応えが出ます。

3つ目は、こちらの商売に近づいた数です。プロフィールのリンクから自社サイトに来た人数、問い合わせの件数、来店や電話。ここが動かなければ、上の2つがいくら増えても、事業としては変わっていません。

報告書に3つ目がない場合は、入れてもらってください。自社サイト側の計測と合わせて見る必要があるので、最初に「どうやって数えるか」を決めておくと確実です。

数字が動かないときに、何を変えるか

3か月続けて3つ目の数字が動かない場合、見直す順番があります。

まず、誰に向けているかを見直します。投稿を見ている人の地域や年代が、想定と違っていることがあります。福井の会社なのに、見ているのが県外の人ばかり、ということも起こります。

次に、何を言っているかを見直します。商品の紹介ばかりになっていないか。読んだ人が「自分のことだ」と思える内容になっているか。

最後に、どこへ連れて行くかを見直します。投稿を見た人が、次にどこを見ればよいのかが分かる形になっているか。プロフィールのリンク先が、会社のトップページのままになっていないか。

本数を増やすのは、最後です。合っていない内容を増やしても、合っていない投稿が増えるだけです。

頼んだあとの最初の3か月をどう見るか

契約して終わりではありません。最初の3か月の見方を決めておくと、続けるかどうかの判断がしやすくなります。

1か月目は、形が整うかを見ます。

投稿が決めた本数だけ出ているか。文章や写真の雰囲気が、自社の雰囲気と合っているか。ここでずれていたら、早めに言ってください。3か月経ってからまとめて言うより、お互いに楽です。

2か月目は、反応の種類を見ます。

数がまだ少なくても、どんな投稿に反応があったかは見えてきます。商品の写真なのか、働いている様子なのか、お客様の声なのか。ここで分かったことが、3か月目以降の設計になります。

3か月目に、続けるかを決めます。

このとき、フォロワーの数だけで判断しないでください。SNSからホームページに来た人の数、問い合わせにつながった件数、社内で素材が使い回せているか。投稿の外側で起きたことも含めて見ます。

記事や投稿が動き始めるまでには時間がかかります。1か月で結論を出すと、たいてい早すぎます。

担当者が変わるときに、何を引き継いでもらうか

代行会社の担当者は、途中で変わることがあります。担当が辞めることもあれば、社内で配置が変わることもあります。

このとき、何が引き継がれるかを最初に決めておいてください。

引き継がれないと困るものは、だいたい決まっています。

引き継ぐもの決まっていないと起きること
投稿のもとになった素材(写真・動画の元データ)編集済みのものしか残らず、作り直せない
投稿の下書きと、これまでの経緯同じ内容を繰り返す、過去に断った企画がまた出てくる
数字の記録前の担当が見ていた指標が分からず、比較できなくなる
自社が渡した資料商品の説明を一から伝え直すことになる

元データは、月に一度こちらに渡してもらう形にしておくと安全です。相手の社内にしかない状態だと、担当が変わったときも、契約が終わったときも、取り戻せません。

あわせて、権限の取り消しと付け直しの手順も確かめておいてください。担当が変わるたびに自社側で操作が必要なのか、相手の会社の側で入れ替えてくれるのか。公式のパートナー機能を使っていれば、相手の会社単位で権限が渡っているので、担当者の入れ替えは相手の中で完結します。

外に頼むのが向く場合と、向かない場合

正直なところ、外に頼むのが向いていない場合もあります。

向いている場合。

商品やサービスが決まっていて、誰に売りたいかもはっきりしている。写真や動画の素材を出せる。社内に、月に1回打ち合わせに出られる人がいる。この3つが揃っていれば、外に頼む形はうまく回ります。

向かない場合。

何を売りたいかが定まっていない段階で、SNSに答えを求めている。この場合、外に頼んでも投稿が散らかるだけです。先に決めるべきことが別にあります。

もうひとつ。社内に誰も見る人がいない場合です。投稿は出ているけれど、誰も中身を見ていない。コメントが来ても気づかない。この状態だと、お金を払っている意味が薄くなります。

月に1回、30分でいいので、数字と投稿を見る人を決めてください。その人がいれば、外に頼む形は機能します。

よくある質問

代行に頼むと、アカウントが止められることがありますか。

代行に頼んだこと自体で止まるわけではありません。規約が禁じているのは、ログイン情報のやりとりや自動化の道具の利用といった、具体的な行為です。公式の権限機能を使い、自動化の道具を使わなければ、通常の運用です。心配な場合は、頼む前に相手へ「規約のどの条文に沿って運用しますか」と聞いてみてください。

IDとパスワードをすでに渡してしまいました。どうすればよいですか。

まず、公式の権限機能に切り替えられるかを相手に相談してください。そのうえで、パスワードを変更し、ログイン中の端末を確認してください。管理者が自社に1人しかいない場合は、この機会に2人以上にしておくことをおすすめします。

フォロワーを買うサービスを勧められました。

規約が禁じている行為に当たります。増えた数字は、お客様になる人の数ではありません。加えて、不自然な増え方はプラットフォーム側の対応の対象になりえます。断ってください。

代行会社が作った投稿の文章は、こちらのものになりますか。

契約の書き方によります。著作権を譲渡する旨と、第27条・第28条を含めること、著作者人格権を行使しないことが書かれているかを確かめてください。書かれていなければ、譲渡したはずの権利の一部が相手に残っていると読まれる余地があります。

月額が安い会社と高い会社の違いは何ですか。

含まれる作業の範囲が違うことが多いです。投稿するだけなのか、撮影から入るのか、コメントへの返答まで含むのか。金額だけを並べても比べられないので、費目に分けて、同じ条件で見積もってもらってください。

契約期間の途中でやめられますか。

契約書の定めによります。会社同士の取引にはクーリング・オフがないので、署名の前に最低契約期間と違約金を確かめておいてください。

すでに契約していて、内容に不満があります。どうすればよいですか。

まず、契約書で決めた作業が実際に行われているかを確かめてください。投稿の本数、報告の回数。決めた内容が守られていないなら、それを伝えるところから始まります。作業は行われているが成果が出ていない、という場合は、成果を約束する契約だったかどうかを見てください。履行割合型であれば、作業が行われている限り報酬は発生します。

アカウントの権限を、相手から返してもらえません。

公式のパートナー機能で渡していた場合は、自社側の操作で取り消せます。パスワードを渡していた場合は、パスワードを変更し、ログイン中の端末を確認してください。管理者の権限まで相手に渡してしまっていると、手順が増えます。この点が、最初に権限の渡し方を決めておくべき理由です。

代行会社が撮った写真を、自社のパンフレットに使えますか。

契約書に、著作権の譲渡と、第27条・第28条を含むこと、著作者人格権を行使しないことが書かれていれば使えます。書かれていない場合は、相手に確認してください。写っている人がいる場合は、その人の同意の範囲も確かめる必要があります。

投稿にコメントが付いたとき、代行会社が返答してくれますか。

契約の範囲によります。含まれている場合も、返答してよい内容の線引きを先に決めておいてください。商品の仕様や価格についての質問は、社内でないと答えられません。「この種類の質問は社内に回す」という線を決めておくと、間違った案内が出ずに済みます。

社員に投稿を手伝ってもらう場合、気をつけることはありますか。

撮影や投稿の作業は仕事なので、働いている時間として扱ってください。写る場合は本人の同意が要ります。退職したあとに写真を下げてほしいと言われる可能性もあるので、辞めたときにどうするかを、撮る前に決めておくと後が楽です。

複数のSNSをまとめて頼んだほうがよいですか。

素材を作る手間は共通するので、まとめたほうが効率は上がります。縦長の動画なら、1本をそのまま複数のSNSに出せます。最初から作り分ける必要はありません。出したあとで反応を見比べ、伸びたSNSに力を入れていく形にすると、手間を抑えられます。

作り直しが要るのは、横長の画面が基本のSNSに出すときです。見積もりが「SNSごとに別の動画を作る」形になっていたら、その分の作業が本当に要るのかを聞いてみてください。

依頼してから、投稿が始まるまでどれくらいかかりますか。

会社によりますが、最初に方向を決める打ち合わせと、素材を集める時間が要ります。こちらが「誰に何を伝えたいか」を用意できているかで、この期間は大きく変わります。先に書いた3つを紙にしておくと、早く始まります。

社内でやるのと、外に頼むのと、どちらがよいですか。

目的によって変わります。この記事は「外に頼むと決めた方」向けに書いています。社内で回す場合との比べ方は、別の記事にまとめています。

SNS運用の5つのやり方を、費用と、動き出すまでの時間と、やめたあとに会社に残るもので比べた記事はこちらです。

外に頼む前に、社内で回せるかを確かめる

前の章で、何を言うかは社内でしか決められない、と書きました。代行会社に任せられるのは、その中身を投稿の形にする技術です。撮る、編集する、投稿する、数字を見る、の4つです。

この4つを社内で身につけられるなら、アカウントのパスワードを誰にも渡さずに済みます。撮り方や企画の型も、担当者の手元に残ります。

社内で回そうとした会社が止まる場所は、だいたい決まっています。

止まる場所よくある止まり方外に置けるもの
覚えるリールの編集や企画の立て方を一から調べて、作業の時間が調べものに消える順を追って学べる教材
追いかけるインスタの仕様や規約が変わったことに、気づくのが遅れる最近の変化を定期的に確かめる場
迷う広告の表示が要るか、この写真を使ってよいかで、投稿の手が止まる迷ったときにすぐ聞ける相手

3つとも、投稿を作る作業の手前で起きています。この部分だけを外に持てば、投稿を作る手は社内に残せます。

この形でも、時間の確保は自社の仕事です。週に何時間を、誰の業務として空けるかを先に決めてください。それが決められないなら、外に頼むほうが続きます。

Film倶楽部では、この形を「Buzz倶楽部」という名前で提供しています。動画教材を見放題で使えて、月に1回のオンライン勉強会で最近の変化を確かめ、日々の疑問はグループチャットで質問できます。

福井の会社が外に頼むとき

最後に、地域の事情にも触れておきます。

福井県の有効求人倍率は、2026年7月時点で1.69倍でした。就業地別の季節調整値です。全国は1.18倍ですから、福井の会社は全国の平均よりも多い求人の中で人を探していることになります。福井労働局は、この水準が100か月続いて全国で最も高い、としています。

この状況で、SNSの担当を新しく雇うのは簡単ではありません。外に頼むという選択には、それなりの理由があります。

ただ、外に頼むことは「人を雇わなくて済む」という意味ではありません。

任せた仕事を見る人は、社内に要ります。月に1回、数字と投稿を見て、方向がずれていないかを確かめる。素材が足りないときに、社内から集める。この役目は外に出せません。

必要なのは、専任の担当ではなく、月に30分を出せる人です。そう考えると、多くの会社で誰かが担えます。

小さい会社ほど、決めることを減らしたほうがよい

社員の人数が少ない会社では、SNSの担当が総務や営業と兼務になります。この形で回すには、決めることを減らすのが近道です。

投稿の本数を欲張らない。月に8本を毎月続けるほうが、初月に20本出して翌月に止まるより、結果につながります。

素材を毎回新しく用意しない。同じ現場の写真を複数の角度で撮っておけば、何本かに分けて使えます。

「続けられる形にする」ことを、最初の設計に入れてください。外に頼む場合も、この点は同じです。相手に月20本を提案されても、自社が素材を出せないなら、回りません。

ただ、外に頼むと決めたあとで、上の5つを曖昧にしたまま進めると、人を雇わずに済んだ代わりに、別の面倒を抱えることになります。アカウントが自社の手を離れる、素材が使えない、やめたくてもやめられない、といった形です。

決めるべきことは5つだけです。見積書をもらう前に、聞いてしまってください。

断ることも、選択のうちです

話を聞いたうえで、頼まないという結論になっても構いません。

聞いてみて、権限の渡し方に答えられなかった。増やし方を具体的に説明できなかった。契約書に解約の条件が書かれていなかった。そういう会社に頼まずに済んだのなら、話を聞いた時間は無駄になっていません。

この記事で挙げた質問は、どれも一言で答えられるものばかりです。答えに詰まるようなら、その一点だけでも持ち帰って考える理由になります。急いで決めなければならない事情は、こちら側にはありません。

SNSの運用でお困りでしたら

Film倶楽部は、福井でSNSの内製化支援「Buzz倶楽部」と、SNSマーケティング、ショートドラマの制作を手がけています。

社内で回せるようにする形も、運用をお任せいただく形も、どちらもご相談いただけます。「社内で回したいが、何から覚えればよいか分からない」という段階なら、Buzz倶楽部の中身からご案内します。「外に頼むべきか、社内でやるべきか」の段階からでも構いません。

この記事で挙げた確認事項について、「うちの場合はどう考えればよいか」というご質問でも結構です。すでに他社と契約されている方から、契約書の見方についてご相談いただくこともあります。

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